観るものと、生活の日記

SHINKANSENRX「SHIROH」

SHINKANSENRX「SHIROH」
★★★★1/2


於:梅田コマ劇場 2005年1月09日マチネ 3階A席 /16日マチネ 3階Z席

作:中島かずき 演出:いのうえひでのり

出演者

中川晃教 上川隆也
高橋由美子 杏子 大塚ちひろ

高田聖子 橋本じゅん 植本潤 粟根まこと 吉野圭吾 泉見洋平

池田成志 秋山菜津子

江守徹

右近健一 河野まさと 山本カナコ

中谷さとみ 保坂エマ 川原正嗣 前田 悟

飯野めぐみ 飯田容子 関根えりか 高谷あゆみ 拓麻早希
玉置千砂子 坪井美奈子 豊福美幸 林 久美子 ももさわゆうこ

安部誠司 蝦名孝一 奥山 寛 小暮清貴 五大輝一
杉崎政宏 須田英幸 田澤啓明 中山 昇 林 洋平 横田裕市

岡崎 司 (guiter) ルーク篁 (guiter) 松崎雄一 (keyboard)
石黒 彰 (keyboard) 岡部 亘 (drums) 前田JIMMY久史 (bass)



(感想)

赤いジュータン、シャンデリア付の梅田コマ劇場に初めて潜入。今時そういうものに感嘆するのも何だけど、美しさにしばらく見とれました。 席は3階前半。高いので少し怖い。けれどもなかなか見やすい。

舞台上には、たくさんのモニターが。そして天草四郎を描いた絵が立派!絵がスキな私はまじまじと眺めて堪能。舞台中にでてきた絵もどれも本格的で見応え十分。

劇団☆新感線はTVで「髑髏城の七人」「踊るいんど屋敷」などと見たことがあったので 今回もロックミュージカルとはいえ、お笑いだろうと思っていたのです。
しかし、どうもフツーのミュージカルっぽい。劇中歌はすきだけど、セリフまで歌にされると頭に入りにくくて、あまりすきじゃないかもしれない。「ううん、笑えるところも少ない。本格的なミュージカルは苦手だなぁ。ついてけるかなぁ」と心配なはじまり。

橋本じゅんさん扮する柳生十兵衛なんか出てきて、上川隆也さん言うに「やっと新感線らしくなってきた」らしい辺りから、確かにそこそこおかしいのだけど。 「まだまだ、こんなもんじゃないんでは?」と物足りない。 第一、マイクの音がすっかり割れて面白かろうセリフも聴こえにくい。もったいない。音響が悪いのか、マイクがいらないのか。
音が総体にやかましく、口元のマイクはナシでいもいけそうでしたよ。

しかし、何より・・・中川君の歌声がすばらしくて。その歌声だけで、すべて補い おつりまでくれました。 ステージ雑誌での、あの華々しい取り上げ。どれくらいいいのか、一度聴いてみたかったのです。ホントにずばぬけており、濁りのない天使のように澄んだ歌声が劇場中に響き渡っていました。中川君自体も天衣無縫な雰囲気で、シローにぴったり。彼をイメージして作られた役かもしれない。 キリシタンの白い服もよくお似合い。

高橋由美子さんも、演技はカッコいいし、歌も上手。 TVでもカッコ悪い役や変わった役も平気でやるのがすごいな、とは思っていたんですけど。 いつの間にかすっかりミュージカル女優さんだったのですね。
歌うイメージがなかった上川さんも、割にしっかりした歌声。
それから、大塚ちひろちゃん。雑誌でちらっとみたことあった程度で、どんな女優さんかぜんぜん知らなかったですよ。これまた役に合う、サワーとしたキレイな歌声に聞き惚れました。彼女出てきたら 周囲のお客さんも一斉に双眼鏡向けてましたが。まだ10代なんて。

その他出演してた人は大抵いい感じ。「この人どうかなぁ」っていうのは あまりありませんでした。泉見洋平さん、吉屋圭吾さんなど「役が目立たないのでもったいないなぁ」というのはありましたが。
一度きちんと☆新感線の役者メインのも見たいです。

話は「天草と島原、2人のシローがいた」という珍しい設定。でも「面白いの?」と半ば疑いあまり期待もせずに観ていたのだけれど・・・

前半終わりごろから段々ひきつけられていきました。
高橋さん扮するキリシタン画家ジュアンが、上川四郎に「一揆の指揮を」と頼むあたりで「あ、ちょっと面白くなってきたかも…」と入り始めて。 そして失敗して虐待されながら牢屋に入れられて…さらに気持ちが盛り上がってきました。
一度は殉教を覚悟したキリシタンが、シローにより希望を取り戻して、牢をやぶり…。そこで一幕が終わり。

休憩時間にはもう「これならチケット代倍払える!」とか 「ミュージカルついていけないなんて、そんなことない!」突然思う程に なっておりました(笑) 牢での群唱にすっかり感じ入っちゃって。初めてミュージカルすきな 人の気持ちがわかりかけていました。

2幕は幕府とキリシタンたちの戦いではじまり、 戦い場面は、真ん中からばばばばっとでてくる白い光に、 バンドの爆音で表現されており、面白い演出。
照明ははじめから印象的で、緑の光で3階までパーっとつつまれたり、 チロチロとほのかなランプの灯りがついていたり、 地面に光の網のような影がおりていたり、全般に美しくて絵と並んですき。この強烈な白い光だけは体に悪そうで、いちいち目を閉じていましたが。

後半の筋は一層、ちゃんとひきこまれるように作られていました。島原の乱の史実が魅力的に描かれているし そこへシローや、幕府の手先だったお蜜さんなど架空の存在がからんで、 「どうなるんだろう」とドキドキ。

キリシタン側について、老中松平を襲い逆に斬られたお蜜さんがシローにキ洗礼を受け 「私もはらいそ(天国)にいけるんだろうか」みたいなこといって息絶えたとき、そこで 初の涙が。つもりなかったので「あ、泣いちゃったか私」と驚き。けどその後は怒涛のように涙が 出るはめに・・・。

順序をよく覚えてなくて、違ってるかもしれないけど、とにかくシローの混血児仲間 たちも殺されてしまい、「戦おう」と思ってたシローも憤りの中で「殉教」を覚悟して 一斉砲撃の日、十字架に体を掲げて砲弾をあびるんですね。体いっぱいに。イエスの ように十字架にはりつけになって…。それをみて他のキリシタンも、自ら大砲の 方へ進み出て次々と倒れていくのを見ると、もう涙止まらなくて。
ふと 「ホントに島原の乱のときもこれくらい悲劇だったんだろうな」とも思ったりしました。 かなり古くて「歴史上の話」としか思ってないことでも、 そこにいた人や気持ちがリアルに描かれた映画などみたら初めて「当時も今と 似たような人が生きていて、実際あったことなんだ」と思えるものですが、今回のお芝居でもそうでした。

それに加えて、島原の乱のはずが、モニターでは現代の戦争映像がうつされていたこと。 「今の戦争のことにもからめて言っているのかな…?」と気づける仕組み。 それに四郎の願いから奇跡が起こって生き返ったジュアンが老中松平に向かって
「あなたがここへ作る国は、はらいそ(天国)か、インフェルノ(地獄)か。 3万3千人の魂と、2人のシローが見ていますから」
と言ったとき、 モニターには現代の日本の街の様子が。「あなた」というのは松平のことだけじゃないんですね。「国」というのもずっと後の後(今)のことまで。

お話の面白さ、歌のよさ、美しく現代的な衣装や照明、演出効果も高く、すべてぐっと心にせまるように作られていました。すごく上等な芝居でした。観ている間は理屈抜きでばーっと感動押し寄せましたね。全くのエンターテインメントとしても、重要なテーマも 含んでいるものとしても、素晴らしかったです。

ラストシーンで煙の中に立つ二人のシローを見た瞬間、即立ち上がって拍手をしたい気分になりました。ただ初参加だし、2、3階席で立ってる人はちらほらくらい。ということで今回は結局遠慮しちゃったけど、 1階はオールスタンディングの模様。まじりたかったですね。
心から繰り返したい拍手でした。カーテンコールもただ出てくるだけじゃなく、歌ってくれてライブハウスさながらとなり、うれしかった。

歌は、キリシタンみんなで歌われる「ひかりはもうめのまえ」というフレーズ がある希望にあふれたものが一番だいすき。カーテンコールでも歌ってくれて、 CDで今もききたい。

帰り際には、ますます「ほんっとにこれはチケット代倍払える!」なんて思いました。 そんなの初めてです。チケット代に見合う、と思ったことすらほとんどなかった(汗)のに。
お芝居は生なので高いけど、ロックコンサートのような高揚感がないのは仕方ないのかな(もう少し安かったらいいんだけどな)と・・・。

もう一度観たくなりました(実際一週間後に観ました)。これもStudioLife以外では初めてでした。



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